A little boy,big city


「どこか違う国の話をするつもりはないわ。わたしは今ここにいて、目の前のあなたと話をしているのだから。」
 こんどあの子に会ったらきっとわたしはそんなふうに話を切り出すのだろう。
 そのように始まる言葉が、たとえお互いにとって苦い認識を強いることになるとしても。
 一週間が七日で、平日weekdayが五日なのは救いじゃないかしら。たとえ七分の五と七分の二がさかさまに思えるとしても、それをさかさまにする大きな力が働かないのなら、今のあり方が皆にとって、わたしとって、もっともよいあり方なのかもしれない。あの子にとっても。
 電車のボックスシートで(窓際が空いていても)通路側に座るとき、奥の窓側に「誰もこないで」ってわたしが願っている。そう彼女に話したとしたら!
「となりに誰か座ってほしくないなら、立ってればいいじゃない。」
 あの子はたぶんそう言うに違いない。
 わたしが話すはずのわたしのことばは「切り出すのだろう」と弱々しく推定されるのに、彼女の話す言葉は「違いない」って断定できる。「してしまう」かしら? たぶんそれはわたし自身の問題。この関係はうまくいきっこないわ。
「わかっていてそれをするのはあんまり賢いことじゃないわね。」
 あの子の声にじゃなくて、そう諭されることを想像してみる。それを言う「女性」がいるとしたら、きっと「あの人」に違いない。そのこともまた断定できるのだから、今日はぐっすり寝られそうな気がする。気がする、だけでも今はいい。