不合理ゆえにわれ信ず

某書店に「何か読む物はないかな」というくらいの気持ちで入り、ソル・フアナ『知への賛歌 ―修道女フアナの手紙』(訳 旦敬介、光文社古典新訳文庫)と、忌野清志朗『瀕死の双六問屋』(小学館文庫)を購入。
この7月に書かれた「文庫版あとがき」によれば、清志朗はどういう治療法を選んでも元のように歌えなくなる現代医学を見切り、代替医療を選んだとのこと。自転車で走り回ったり、友人のライブに出たりもし始めているとか。本当のところ、身体がどうなのかわからないけど、何にせよ、また清志朗の姿が拝めることを切に願う。
ソル・フアナという17世紀末メキシコの修道女にして現在の200ペソ紙幣にもなっているという国民的詩人のことは全然知らなかったが、最近評判の「光文社古典新訳文庫」であり、《三百年前のメキシコ・シティで、誰にも相談できずにひとり考え、悩み、どうして、なぜ、と世界の不合理を問い続けた、ひとりの、小さな、美しい妹の、全存在をかけた呟きと叫びをぜひ聞き届けてほしい。》という「訳者まえがき」の言葉に惹かれた。いくつかの詩と二通の書簡を収めたコンパクトな本で、今日一日パラパラと読み進めたが、寝転びながら読んだけど、心の中で背筋がピンと伸びるような、「しゅっとした」佇まい。


《なぜなら私が真実の心において選ぶのは/人生の幻を費やすことであり、/人生を幻に費やすことではないのだから。》(『知への賛歌』より)