五つ目はやめておけばよかった

 音楽について語るときに歌詞のことばかり取り上げるのはおかしい。というか、日本語で書かれているブログなどを見ると、歌詞のコピペばかりが目立ち、歌詞のことばかり触れられていて・・・・・・という内容の文章をどこかで読んだことがあって、たしかに音楽は音で、歌があっても、歌も音楽の一部で、それを書き起こした歌詞はまたその一部で、というわけなので、その文章の言わんとすることはわかります。

 わかりますが歌詞を書いて歌っているいじょう、おざなりにはしないで欲しい。というより曲にメロディをつけて歌っている人は、そういうフォーマットに則っているかぎりにおいて、いろいろと試行錯誤しながら曲に合うように、よりベターな、ベストだと思えるようなメロディをつけて歌詞をつけて、という作業をしているのではないかと想像します。

 わたしが洋楽を聴き始めた中〜高校生だった90年代なかば、日本盤のCDを買って必死に歌詞カードを読んでも、ぜんぜん頭のなかに歌詞が入ってこなかったのは、たぶん翻訳がよくなかったからで、ひどい場合には誤訳がかなりあったようです。わたしは今も英会話もできないくらいで、先日も出先の行楽地で、ヨーロッパ人に「キャンユースピークイングリッシュ?」と訊かれて「ノー」と答えて、おそらく「イエス」と答えてもそのあとに続く周辺の観光情報を訊かれても答えられないだろうと考えたのもあるのだけど、まあそれくらいで、今よりも、受験勉強をしていた高校3年生の頃の方が英語のリーディングはできただろうから、英詞が載っていればあるいはもう少し詞を理解できたのかもしれないが、欧米のミュージシャンのCDには歌詞があまり載っていない。載っていてもミミズののたくったような手書きのものだったりして、それも読めない。

 そんなふうなので、海外のミュージシャンの音楽は歌詞を理解しないまま聴いてきていて、最近では音源の入手をCDのネットレンタルやダウンロード販売に頼っているので、歌詞カードすら一度も手にすることがないままで、より歌詞に接する機会がなくなっている。

 それでもそれなりに有名な欧米のミュージシャンの英詞の曲はたいてい、ネットで歌詞を入手できる。だからやっぱり、英語は読めた方がいいなあ、と思います。そういうことを書くつもりじゃなかったんだけどな。下記の、このラップの歌詞(ヴァース、というんですね。)がすごく好きです。日本語のラップって、フック(サビ)よりも、ヴァースの方が聴いていて楽しくて、それは歌詞を聴いているからで、他のジャンルよりも全体として意味が通っている歌詞が多くて、この長さで(250字くらい)でこれだけのことを言えるのだからラッパーはすごいなあ、と思います。

万事快調ったぁ言い難いdays 互いの主義主張同士が今日も対決
話し合いさえすれば解決ってわけでもない こいつは根が深いケース
要はとにかくムシが好かねぇ 何かって言やぁすぐにムシ返すタネ
アイツと違って粘着じゃねぇ!と自分じゃエバってんのに ぶり返す邪念
あるいは立場を交換すると ヤツにさえかすかに共感する
どころかヘタすりゃ共通項ばっか だったりして ちょいとこいつは困った
こちらから見りゃサイテーな人 だがあんなんでも誰かの大切な人
ならいいんじゃん?と思えた不思議 風向きだって変わるさそのうちに
(ライムスター「Pop Life」)