特集:やっぱり多猫飼い!

 VAN HALANというバンドの「JUMP」という歌が無性に好きだ。
 平日は夜になると明日になるのがいやになり、朝は仕事場に着くのがいやで、昼休みが終わるのがいやで、帰ると寝ると次の朝になるのがいやで、とほとんどノイローゼで毎日まいにちこのスパイラルから逃げ出したいと、心の底から思っている。土日も仕事をしに行くが、それでも少しは息子と接することができて、救われる。わたしのような息苦しさを感じて日々を過ごしている30代が今この地球上には、掃いて捨てるほどいるんだろうな――という感想はそれが事実だとしても少しもわたしの心を慰めず、端から見れば妻子に恵まれた幸せな家庭に見えることも認識している。

 息子は妻の手を取って妻の足を登って逆上がりができるようになった。毎朝わたしは6時50分に起きると布団を上げて顔を洗い、同じ洗面所の蛇口で頭を濡らす。次いで庭に出て倉庫から鯉のぼりを出し妻にインスタントのお茶漬けか味噌汁を作ってもらい、それを1分くらいでかき込んでめざましテレビかZIPの音だけ聴きながらソファで7時30分まで寝る。BS3チャンネルで朝の連続テレビ小説梅ちゃん先生」が始まるとわたしは家を出て走り出したわたしの車、「オーガニックオリーブ」という緑色の日産キューブが、まもなく仕事場に着いてしまうことを心の底から呪いながら、できるだけ遅く、なるべくなら着かなければいい、と祈るような気持ちでハンドルを握り、控えめにアクセルに足を乗せるのだ。

 土曜日の夜は妻と二人で、わたしはちょっと前に一度観た、『インスタント沼』(三木聡監督、麻生久美子主演)という映画をライフタッチノートという7インチのアンドロイド端末を使って息子の寝ている隣の布団にくるまって観た。二度目に観てもコントのような展開に似つかわしくないまっとうな映画で、三木聡という人のくどいコメディのセンスはわたしは興味も関心もないのだけど

「ね。けっこうちゃんとした普通の映画でしょ。」

 とそればっかり妻に言って、このちゃんとしたところが好きだ、と思っていた。少しのひねりもない、わかりやすいストーリー。それでいて、ムダなエピソードの積み重ねのように見えて、それがたまらなく心地よい。その道のことは全然知らないけど、すごくまっとうで、よくできた映画なんじゃないかと思った。こういうのを朝の連続テレビ小説でやってもいいよね。

 レコーディングに柏原譲茂木欣一ハカセが参加した真心ブラザーズ95年の名曲「日曜日」。今まで知らなかった。異常なほどかっこいい。このライブはユズルときんちゃんと沖祐一。