美しい音楽が聴こえたら、言葉なんかじゃいえやしない涙が流れてくる。
いまおかしんじ『おじさん天国』をDVDで。ゴーゴリ『外套』、カフカ『流刑地で』を青空文庫で。どれも、なんでこんなこと(話とか、場面とか、展開とか)が描かれているのかわからない。読み始めは、見始めは、おもしろいのかどうかもよくわからない。そして、だんだん、ある場合には、終わってからだいぶたって、「ひょっとして、おもしろかったんだな。」とわかる感じ。
ところでわたしは映画というか映像が苦手だとおもった。『おじさん天国』は、主人公の若い男のおじさん(親戚かなにか)が不眠症で、寝ると変な女の夢を見て寝たままちんこをしごきまくって血が出るまでしごきまっくてしまうから、寝ないようにしてるとちんこが勃ってしまうからそのへんにいる女とやりまくる、という話で、いっぽう、主人公の若い男は「ダイオオイカ」という巨大イカを釣りたいとおもっている。と書いてもなんのことかわからないけど、無数のイカが浮いてる真っ黒の風呂に入ったり、巨大な蜘蛛に背中を刺されて黒いブツブツができて死んだり、地獄(ビジネスホテルみたいなとこ)で閻魔大王(掃除のにーちゃんだけど顔が真っ赤で角が生えてる)が出てきたりなんか赤くてどろどろした地獄の女にちんこ吸われたり、ビジュアル的にヘンで多少気色わるいのだが、それを見るのが結構苦痛なのだった。
もっとグロテスクな映画・映像は世のなかにいっぱいあるけどこの程度でもきつい(というか、グロいものはあんまり見ない)。だからおもしろいのに気色わるいのがちょっと苦手で、でもそれをいったらカフカ『流刑地で』だって拷問機械の話で拷問器を操る将校がみずから機械にかかって死ぬ描写が出てくるけど、文字だけだとぜんぜんだいじょうぶなのだ。わたしの場合読むときにあまり具体的にあたまのなかで映像化しないからかもしれない。
とにかく『おじさん天国』の映像は苦手で、藍山みなみとか平沢里菜子とか、出てくる女の子が、わたしが見たいまおか作品ではじめてかわいくてそれが救われた。でも場面場面、とてもきれいな映像もありましたよ。風景とか、早朝の青白い空のもと、カーセックスしてるシーンとか。
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