にんげんドライバ。

 成人式だというニュースを見ていたら考えた。というかけっこういつも思うけど、世のなかは世のなかを個人の都合は関係なく、「廻す」ため「だけ」に動いている(あくまでマクロ的に見たらだけど)。CMとか見てるとほんとそう思う。疲れたけど滋養強壮剤飲んで頑張るお父さんとか、こどもたちの思い出の写真とか、今までより安く行ける旅行とか、理想の結婚式とか豊かな老後とか。美しいイメージはすべて、なんとなくわたしたちが望んでいるものと思わされている。そのつるつるした感じの気味の悪さにときどき気がついてしまって、やるせなくなる。それは不幸かも知れないけど、その「つるつる」いじょうの内面がない人もたくさんいる。それをベタな表現にしたのが『マトリックス』という映画でマトリックスのなかの世界であることを知らずに生きている人たちだ。しかし知っているいじょう逃れられない。このひりひりした感じから。このばかばかしい感じから。トミー・リー・ジョーンズが宇宙人に扮している缶コーヒーの宣伝でいう、「このろくでもない、素晴らしき世界」というコピーで、こういうわたしの感慨も商品化されてこちら側に内在化されていることがわかる。くわばらくわばら。デヴィッド・リンチワイルド・アット・ハート』を10年いじょうぶりに見て、そういう世のなかの底が抜けていることを再認識いたしました。