夢を持たないと現実が直視できる

 最近は結婚後の「お小遣い制」という制約があるために(しかしそれも有名無実化しているじゃない、と妻には結構指摘を受けるのだが)、自由には本が買えないということもあるのだけど、買うときには外れのないように選んでいるために、買って読んで「ハズレ」ということはほとんどなくてどれも面白いのだが、こちら側の「まだこれを読めるに至っていない」という端的にいって「能力」の問題のために、まだ読めていないという本もたくさんある。
 少し前にも、いくつか読みたい本を並べてみたもののそのうちひとつも読んでいないどころか買ってさえいなくて愕然としたのだけど、またぞろ色々読みたくなったので、自分の備忘のためにいくつか挙げておく。

 <青山さんは都会の香りがしそうな端正な顔立ちで今すぐ眼鏡を外した衝動に駆られるナイスガイだった>
 もしも、主人公に夢があったら、「都会の香り」「端正な顔立ち」「ナイスガイ」などの言葉は使われないだろう。素敵じゃないからだ。だが、もはや素敵によっては生き残れない。素敵は邪魔で迷惑なのだ。
 それよりも主人公は「今すぐ眼鏡を外したい」の獣っぷりや「、」のない息遣いによって息残りを目指す。ライブ感に充ちた一行一行を目で追っていくと、夢で腐食した現実の皮がべろべろ剥けてきてイタ気持ちいい。

 というのは朝日新聞2009年4月5日付書評欄の宮崎誉子『派遣ちゃん』の穂村弘による書評で、これと、横尾忠則の書評で知った『戦場の画家』は、書評の方が読んだときの実感より面白いんじゃないか、という予感があって、読むかどうかわからないのだけど、このなかで、少なくともロスコの美術論集『ロスコ 芸術家のリアリティ』と、現代思想による革命(!)が企図されているらしい『夜戦と永遠』だけは近いうちに必ず入手して読もうと思っている。歯が立たないかもしれないけど、挑戦しなければ人間は成長しない。ロスコはこれを読んで、展覧会期間中に川村美術館に行こうと思っています。しかしロスコ本は5460円、『夜戦と永遠』は6930円。買い換えようと思っている車よりはずいぶん安いけど、やっぱり高い。これくらい、迷わずに買えるくらいはお金が欲しい。