「まずいラーメン食ってみたりするのもさ、なんかオモロイじゃんよォ」とハル子は言った

 大学のときは自主映画制作を行う映画部にいたにも関わらずぼくはあまり映画を観ない。自己認識では映画は「好き」だし、観れば観るのだが、二時間という時間をかけることに億劫になっていて、なかなか見始めることができないのだと思う。実際、観る頻度でいえば、たぶん世間一般の平均値かそれ以下じゃないだろうか。しかし不思議なことにアニメだとあまり気後れせずに観れて、何回も何十回も観るのはほとんどがアニメで、テレビシリーズのエヴァンゲリオンとか、同じガイナックスフリクリとか、王立宇宙軍とか、以前にも触れたエウレカセブンとか、それこそ、何十回、何百回観たことかわからない。他には押井守作品も(パトレイバー攻殻うる星やつら……)。何故なのだろうか?
 ぼくはなべて「ストーリーらしいストーリーがない」「いつ始まっても、いつ終わってもいい」というような、アンチドラマなフィクションを愛し、エンターテイメントは苦手な方なのだが(しらじらしく感じてしまう)、商業アニメというのはエンターテイメントの最たるものだし、しかもオタク的文脈やサンプリング的手法を駆使した「お約束」「引用」で多くの作品が成り立っている。
 だからアニメが好きだということを考えると自分が理想だと思い込んでいるフィクション像が揺らぐ。(前述したようなタイプの)好きな小説を読んでいても、登場人物の誰それに感情移入することはあまりないが、アニメだと「エヴァ」を初めて見た高3の頃にはすでに「キャラ萌え」の感情を理解していた。というかわりと素直に「綾波萌え」だった。1999年には「ハル子萌え」だったし、2005年には「エウレカ萌え」だったと思う。カンタンにメディアミックスにも「乗る」というか、ピロウズを好きなったのは「フリクリ」を観たからだし(それ以前の庵野秀明による実写映画「ラブ&ポップ」で使われて気にはなっていた)、「エウレカセブン」でスーパーカーが使われていて、もう一度ちゃんと彼らの音楽を聴いてみる気になった。
 しかし今日は本当はアニメではなく、ロベール・ブレッソンという映画監督の断片的なノート『シネマトグラフ覚書』から色々抜き書きしようと思っていたのだけど、そこまで辿りつけなかった。やはりぼくは、映画には億劫なのだろう。
シネマトグラフ覚書―映画監督のノート