地元なら

昨夏甲子園で優勝した佐賀北高校「岸川ネット」(現巨人コーチ)、この辺りなら南部高校の「濱中ネット」があるように、全国津々浦々の高校のグラウンドには、全国津々浦々の「超高校級」スラッガーたちが「飛ばしすぎる」ために、場外ホームランを防ぐネットが張られているのだろう。その光景を想像すると、やっぱり高校時代に記憶が飛ぶが、輝かしい思い出などあまりないので、ちょっと時を下って、友人が僕の携わっていた雑誌に書いてくれた『告白』のレビューを読み返す。

安政四年、河内国に生まれた城戸熊太郎。彼は呟く、「なぜ俺はこんなに思弁的なのだ」。しかし河内弁は、その思弁を他人に伝える術を与えなかった…。そんなキャラクターを生んだことで、町田康は過去最高の文体を手に入れた! 言語と現実のはざまに突き落とされ、その不条理にもがく人間を描いた著者渾身の長編小説。

 なんてなマジなレビューが載っていたエロ本で僕自身が書いた唯一の長文の映画レビューが『くりいむレモン』で、今読み返してもけっこう好きなのだが(自腹でDVD買って書いたんだった)、あれから3年近く、自分は進歩していると言えるだろうか。『告白』のレビューを書いた友人は僕にとって大切な同士で、例えば今この時間、彼は何をやっているだろうか。何を企んでいるだろうか。と考えると、すぐに惰性に流れる自分を奮い立たせることができる。僕らは僕らで、「俺ネット」を越えるアーチを描かなければならない。