ファックに乾杯。

 デヴィッド・リンチ『ブルー・ベルベット』をDVDで。テキトーに観たからあれだけど、面白かった。面白かったけど観ているあいだはそれほどでもなかった。観終わってしばらくして
「面白いものを観たなあ。」
 って感じ。というのは、観ているあいだこの話がどうなるのか、いま何が起こっているのか宙ぶらりんな感じが続いて、ありていにいったら、タイクツしている。小説でも映画でも「宙ぶらりん」「何がどうなるのかわからない」感じのものは好きなのだけど、文章ではそういうとき、そういう文章を読んでいることじたいが面白くてしょうがないのだけど、映画ではたぶん(わたしは)タイクツしている(ばかばかしくて笑えるのは笑えるのだけど)。
 たとえば李相日の『悪人』は、よくできてはいてもそんなに面白い映画だとは思わなかったけど、観ているあいだはけっこうはらはらして目が離せなくて、見入っている。でも観終わると、描かれていることは話としてそうなることとか、キャラクターの感情とか、映画を観なくても「わかってる」「知ってる」ものの感じがしてしまう。
 わたしにとっての文章と映像の違いかどうかはまだはっきりいえなくて、まだデヴィッド・リンチももう少し続けて観たら、感じが掴めてきて観ているあいだも面白くなるということかもしれない。