フォー・ザ・アートワークス。

 小津安二郎秋日和』をDVDで。平出隆葉書でドナルド・エヴァンズに』を三週間かけて読み終わる。架空の国の架空の切手ばかりを描き、31歳で火事で死んだアメリカ人の画家にあてた、(届くあてのない)手紙をまとめた詩人の本。わたしは詩がほとんどわからないから、こういうあわいにあるような散文のほうが好きです。買ってから8年あまり、たった161ページの本を3週間、そういう速さ(遅さ)で読んでよかったとおもえるような本です。
 『秋日和』は原節子三部作(紀子三部作)、『秋刀魚の味』につづく個人的に5作目に観た小津。やっぱり娘の結婚! ストーリーも配役も演出も何もかも様式美を感じさせるけどどこかおかしいとおもう。狂ってるとさえおもえる。なんかところどころ世界が歪んでるというか、「いがんでる」(関西弁?)というか。同じ役者さんがしょっちゅう出てくるけど、同じ役者はいつも同じキャラクターづけだし。そんなことも含めて、「世界の」映画監督だから、ものすごーく語りつくされているはずだけど、なるべくそういうのを見ないようにしてちょっとずつ観ていこうっと。くせになる感じだけど、先入観になるからできるだけ気持ちを抑えてね。