季節の記憶

 土曜日にパタゴニアン・オーケストラの面々や画家・中川貴雄氏らとバーベキュー。わけあってこの宴の一部の録音を起こしている。駄菓子屋で万引きした話とか、小学生でこづかい出しあってはじめてエロ本買った話とか、バカ話ばかりでぜんぜん本題にたどり着かない。というか、バカ話を起こす必要はないのだけど、でもこの夜の気分を出すには起こすべきだろうな、と思って聞いている。というかその場でもほとんど聞き役だった自分がまたひとりでそれをヘッドフォンで聞いて起こしている、というのが自分でもおかしい。というかバカ話を起こすのが楽しい。
 そのなかで昔飲んだ懐かしいジュースの話が出てきて、ドクターペッパーとかメローイエローとか、あとロイヤルタップとか。とはいえぼくはメローイエローとロイヤルタップは知らなかった。ロイヤルタップは検索しても出てこない。間違ってるかな?
 こういう思い出話はやっぱりローカリティが出るから、「ヨソ者」のぼくはその話に割り込んで自分の話をするより聞いているほうがよくて、しゃべらない。というより地元にずっといないとこういう場で記憶が更新されないから、昔のことをあまり憶えていないのかもしれない。
 でも飲み物の話はぼくにも記憶に残っているものがあって、透明なコーラ「タブクリア」の話をしようと思ったのだけど、これも「透明なコーラ」くらいしか記憶になくて話さなかった。ウィキペディアなんかをみたら俵孝太郎のCMがセンセーショナルだったと書いてあるがあまり憶えていない。
 まともな記憶は小学生くらいからあるはずだけど、とくに学校でのことなんかはばくぜんとした雰囲気か端的な出来事だけで(あの先生は好きで数年間年賀状を出し続けた、とか、あいつと話していて急にキレていきなり殴ってしまった、とか、一行で終わってしまう)、共有した相手と繰り返しアウトプットしないと、こういう記憶はどんどんこぼれていくみたいだ。
 反対に家族との思い出は、あまりにも何度も同じことを言われるために、ほんとうに自分で記憶しているのかわからなくなってくる。
 あとはローカルなブランドのお菓子やカップ麺の名前。「サンレイオレンジジュース」(そうそう。ジュースといえばこれか、ウチの場合はあと、生協の「ミックスキャロット」だった)「ブラックモンブラン」「にわかせんぺい」「にんにく入りラーメン 男性専用」……。福岡吉本博多華丸・大吉は中学生の頃好きだったが、今の児玉清のモノマネみたいに目立った芸もなく、なんで好きだったのか憶えていない。こどもの頃からずっと好きなものって、いろいろの理由はたぶんぜんぶ後付けかもな、と思う。今でも自分のベスト5に入る映画「王立宇宙軍」とか。博多華丸・大吉のことは児玉清のモノマネで大吉がブレイクするまで忘れていたからちょっとちがうけれど。