コロンブスの卵

「昼寝してたら思いついたのよ」
 妻が嬉しそうに、子どもの名前についてコロンブスの卵的な提案をしてきたのだった。
 妻の旧姓の一部を使うという案である。
 妻は私との結婚を機に苗字が変わってしまったわけだが、旧姓にとても愛着がある。とても珍しい苗字だ。僕は結婚に際して、その苗字になってもいいと思っていたが、結局のところ、二人の姓は僕の家の苗字になった。
 僕の(つまり二人の)苗字の後ろに妻の旧姓の一部を逆さにくっつけると僕の苗字の最後の字と妻の旧姓の最後の字が同じであるために、その一字を真ん中で共有して、僕の苗字と妻の旧姓が現れる。なかなか素晴らしいアイデアだと思う。
 シンプルだし、音の響きも(意外に古風で)いいし、「子」とか「美」とか「朗」とか「男」とかを後ろに付ければ、あるいは何も付けなくても、男女どちらでも通用する。何より、二人が出会った意味とそれぞれの家の過去から現在、未来への繋がりも感じられる。
 まあ、子どもができる予定は今のところないから、できたときの話だけれども。