「哲学的理由はないよ」

 小説をよく読む人ほどそこのところを間違っている(というのがいいすぎなら勘違いしている)から一般的にいってあまり小説をよく読む人と話したくないのだが、普遍的だからリアリティが感じられるのではない。「こんな高校生いまどきいないよ」などといってその小説の人物造型のリアリティのなさを非難するのは間違っている。それを決めるのはあくまでその小説の面白さ、その小説のディスクール、もっといえばその小説自体だ。曲解されると困るのであえて書くが、その小説の「作者」ではない。その「小説自体」だ。そういうことがわからない人とは端的にいって、小説のこと、あるいは芸術一般のことは話したいと思わない。とくにその人が小説や芸術が好きな場合には。