あさきゆめみし。

 相変わらず仕事が思うにまかせなくて苦しい日々が続いています。こういう心の余裕のなさは高校の頃とか、就職が思うにまかせなかった大学の終わりごろとか、なんどか経験しているはず。なんとかなるさ、と言い聞かせています。
 ものすごくまっとうというか当たりまえ過ぎて笑っちゃうけど、本当に家族の、とくに息子の笑顔だけが心の支えだったりします。テレビなんかで子どもを失うニュースやドキュメントやフィクションを見ると本当に心が苦しくなります。
 ある物理的な制約で最近は映画といえば日本映画を観ることにしていて、週末の夜、布団のなかで7インチの画面で妻とふたりでヘッドフォンを二つ繋いで観ている。
 最近観た映画をいくつか。
 『東南角部屋二階の女』…なんだかみんないらいらしている。西島秀俊のいらいらしている感じがいい。だれだって心が平安なときばかりではないから、なんだかいらいらしているけど、そうではないときもあって、そういうのがちゃんと描かれている映画はいいです。こういうことを考えると、18〜9歳の頃に好きだったヘイデンというアメリカのミュージシャンのファースト・アルバムを思い出します。「エヴリシング・アイ・ロング・フォー」というのがそのタイトル。ひさしぶりに聴きたくなった。
 『ガマの油』…役所広司の初監督作品。妻のリクエストで借りてみた。変な映画で、すごい映画だとは思わないけど、心もちのいい映画でした。ちゃんと生きている大人を尊敬したくなるような。なんかなめらかじゃない、かっくんかっくんした感じの展開も好みでした。よくできた映画、じゃない感じ。でもちゃんとできてるからそれが出せるんだろう。「株チェック株チェック、どんなもんじゃい!」という役所広司の携帯電話の着ボイスが耳に残って、面白い。個性的なキャストもいいです。なんか「いま注目の!」女優らしい、二階堂ふみちゃんがいい味出しています。
 『たまたま』…女子(オリーブ少女もしくはオリーブおばさん)が好きな女の子や男の子や音楽やファッションや風景に囲まれて、キャッキャッいいながら作った「蒼井優ちゃんかわいいね。」な究極の自己満映画。10代くらいの頃に観たら「クソが。」と思うところだけど、悪くない。というか、男子にはぜったいこんなものは作れないな。永遠のオリーブ少女もしくはオリーブおばさん、におすすめ。ファッションが変わっててかっこいいな、と思ったら妻の好きな大森予佑子さんでした。妻は「もりやまかいじくん!」といっていました。
 『海炭市叙景』…10年前、松村雄策の本で教えられた佐藤泰志の小説が、どういう経緯でか映画化されたもの。わたしは小説を読んでいたのである程度検討はついていたが、妻いわく「救いようのない話ばかり」のオムニバス的な(じっさい、小説は連作短編)北海道の架空の街、海炭市の年末年始に起こる短い話の集まった映画。妻もだから面白くない、というわけではないみたいだったけど、わたしは不思議と悲壮感は感じなかった。しわがれ声のおばあさんが、タバコを持った手で猫を撫でるシーンがかっこよくて。
 音楽はあまり聴いていませんでしたが、改めて聴いたのはエルヴィス・コステロ。レンタルだけど、CDを入手してちゃんとエルヴィス・コステロを聴いたのは初めて。『ベスト・オブ・エルヴィス・コステロ〜ファースト 10 イヤーズ』というベスト盤で、知っている曲も多いけど、ロックはいいね。ああ、おれの人生は、ロックに支えられてるんだなあ、とばかみたいに再認識しました。やっぱりばかみたいだけど、判断基準は
「ロックかロックじゃないか。」
 ということ。あと、音楽じゃないけど、声と語りのダウンロードサイト「ラジオデイズ」の「大瀧詠一的2011」(大瀧詠一×平川克美×内田樹の対談)もよかったです。