トム・フーパー『リリーのすべて』The Danish Girl(2015)を観ました。

 「世界で初めて男性→女性の性適合手術を受けた人物」の伝記映画。幸せな結婚生活から、画家の妻の絵のモデルのために女装を始めたことによって、自身の性への違和感に気づき、妻との愛とのあいだで懊悩する主人公の心の動き、揺らぎを過不足なく描いている。――過不足なく、すなわち少し綺麗にまとめすぎている気もしないでもないけれど、“「美しくありたい」と願う主人公にとっての世界”、妻や周囲(あるいは観客も)にとっての、“受け止められる閾値内での、出来事の見え方”なのかもしれないと思った。