本を読みながらアイロンをかけることはできない
今日は映画を観なかった。
やらなかったことを書くのも変だけど、最近は映画を観ない日はそういう感じがする。「映画を観なかった」という感じが。
このところは早く帰るようにしているので、ひとり食事を作って食べ洗濯機を回しつつシャワーを浴びて出てくると八時くらいで、洗濯機から出したばかりの濡れたままの、今日着たシャツにアイロンをかけながら、宅配レンタルのDVDかAmazonプライムで映画を観るのだが、今日はアイロンをかけないことにしたので映画も観ない。
アイロンは家事のなかでいちばん好きだ。料理も好きだが、技術を磨くつもりがないのでうまくならない。それをいったらアイロンだってうまくならないが、毎日同じ時間をかけてアイロンをかけるのが好きだ。
しかしアイロンをかけるあいだ、観る映画がなかったら、あるいはラジオで代用することもあるが、それもなかったらどうか。わたしには悩みがあって、それは、年々「ひとつのことを集中してできない」という性癖あるいは性格的な欠陥が強化されているのではないか、ということだ。
朝起きたら、電子レンジで弁当に入れるごはんをあたためながら顔を洗い歯を磨く、歯を磨きながらシャツを着て、ポットに湯を沸かす、歯磨きを終え顔を洗って髭を剃ったら、Bluetoothのイヤフォンでラジオを聴きながら着替える。着替えつつ、沸いた湯でインスタントコーヒーを淹れる。
こう書くとスムースなルーティンのようだが、だいたいどこかでつまづいて、歯磨き粉やらコーヒーやら、液体を床やシャツにこぼす、シャツのボタンを掛け違える、というようなことが日常茶飯事だ。一つひとつきっちりやることの方がずっと効率的なのはよくわかっている。しかし朝の一連の流れのなかで止められない。
思い当たるふしがある。最近は本を読んでいないのだ。久しぶりに読むと色々なことに気が散って読み進められない、今こうして日記を書いていることだってそうだ。
本を読めばいい。
2016年に観た映画ベスト10
わたしは今38歳ですが映画を観るようになったのはここ数年で、2016年は301本の映画を観ました。世のなかにはもっと観ている人もたくさんいるのでしょうが、個人的にはこんなに観たのははじめてで、せっかくなので2016年のベスト10を選んでみました。
とはいえわたしは今まであまり観ていないので、「2016年に観た」といっても大半が旧作で、しかも古今東西の名映画といわれているものも初めて観るものがたくさんあり、それらに順位をつけるなどはおこがましいにもほどがあるので、「いい映画」ベスト10というより、今日の気分で、「好きな」「思い出したくなる」タイプのものを選びました。いいわけが多くてすみません。
では。
✳✳✳
ナット・ファクソン、ジム・ラッシュ『プールサイド・デイズ』The Way Way Back(2013)
2016年はじめの方に観て、「この人たちのことをずっと覚えていたい!」思った映画。実はもううろ覚えになっているので、もう一度観たいです。
ジョン・ファヴロー『エルフ/サンタの国からやってきた』Elf(2003)
大好きなウィル・フェレル、大好きなズーイー・デシャネルの可愛いかわいいクリスマス映画。毎年観たい。
ロバート・マリガン『アラバマ物語』To Kill a Mockingbird(1962)
かわいくて楽しくて、怖くて、腹立たしくて、勇気が出る。映画ってすごいな、と思いました。
スティーヴン・ヘレク『ビルとテッドの大冒険』Bill & Ted's Excellent Adventure(1989)
バカが二人集まって、楽しくやったら世界が明るくなった! という夢のようなお話。映画ってすごいな、と思いました。キアヌ・リーブスってこういうところから出てきたんですね。
ジャック・タチ『プレイタイム』Play Time(1967)
「映画ってすごいな」といえばこれ以上ないくらいの。未来都市をそのまま作るなんて! 衝撃でした。しかもこんな映画なのが、フランス映画がというか、ジャック・タチがというか、すごいなー。
フランソワ・トリュフォー『トリュフォーの思春期』L'Argent de Poche(1976)
2016年はトリュフォーが大好きになったのですが、そのなかでも。40年前のこの子どもたちが本当にいとおしい。
村川透『さらば あぶない刑事』(2016)
小一の息子が先にハマって、一緒に何度もなんども観た映画。わたし自身たぶんリアルタイム世代だけど、ドラマは当時観てなくて、今回、今さらながらタカとユージが大好きになりました。トオルもいいんだよな。
アダム・マッケイ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』The Big Short(2015)
これも繰り返し観た映画。リーマンショックがどういうものか全然知らなかったので、本当にびっくりしました。原作本や関連する映画なども観て、なおもびっくり。監督がウィル・フェレル映画のアダム・マッケイなのも驚き。
ケン・ローチ『天使の分け前』The Angels' Share(2012)
勇気の出る映画とはこういうのをいうんじゃないでしょうか。主人公たちはダメな子たちなんだけど、こういう境遇の若者に対して監督が、本当に愛していて背中を押してあげたいんだ、ということが伝わってきました。彼らの未来に期待したいし、そう思うことで自分もがんばろうという気になります。
トッド・ヘインズ『キャロル』Carol(2015)
格好よく生きる、ということがどういうことなのか、この映画のルーニー・マーラと、ケイト・ブランシェットが教えてくれる。無様でもいいから格好よく生きたいな。
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順不同です。次点、というか他にも好きだった映画が山のようにあるのですが、挙げていたらキリがないのでやめておきます。この年のいちばんはじめ、元旦に観たのがベン・スティラー『ズーランダー』Zoolander(2001)だったのは記録しておきたい。バカバカしいにもほどがある役でカメオ出演のデヴィッド・ボウイに、合掌。
ヴィンセント・ギャロ『ブラウン・バニー』(2003)を観ました。
DVD(『バッファロー'66』との2in1)が出た頃に買って観て、たぶんそれ以来。
ヴィンセント・ギャロ自身が演じるバイク・レーサーがレースを終え、次のレース会場まで、車にバイクを積んで移動する。車窓、車窓、また車窓。道々で女を引っ掛けては、再びオン・ザ・ロード。「女を引っ掛ける」といっても、ことを致す前に自分から女の元を立ち去る。
ストーリーともいえないストーリーで、ソフトストーリーというのか、そういう類の映画の極北みたいな感じ。
実は今、観ながら退屈して、これを書き始めている。ひたすら車窓が映り、うらぶれたダイナーで食事をしたり、荒野のハイウェイのスタンドでガソリンを入れたりしているヴィンセント・ギャロ(役を演じているように見えない。「自分を」演じてるように見える)を観ながら、他のことを考えていて、とうとう思わず。
たしか終盤に酷いひどいことが起こる。それを観たらたぶん、「ああやっぱこいつ(ヴィンセント・ギャロ)最低ヤローだ。」と思うだろう。
記憶違いかもしれないけど。あと30分弱。退屈しつつも、わたしはこれもいい映画のひとつだと思う。少なくとも、好きか嫌いか、と言われれば好きだ。
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マイク・ジャッジ『シンディにおまかせ』Extract(2009)を観ました。
ジェイソン・ベイトマン演じる主人公ジョエルは食品の香料を製造・販売する会社を経営している。子どもはいないが、結婚して美しい妻がいる(妻はクリステン・ウィグが演じている)。会社の経営は順調で、大手からの条件のいい買収話もあり、それが実現すればジョエルは若くして悠々自適の生活を送ることができそうだ。
そんなふうに彼は成功者であって、何不自由ない暮らしをしているように見える。悩みといえばここ最近、妻とのセックスがご無沙汰である、ということくらい。
ある日、工場の生産ラインでスタッフの一人が片タマを失う事故を起こす。それを新聞記事で読んだサギ師の若い女性、シンディ(ミラ・クニス)はジョエルの会社に臨時工として入社、思わせぶりな態度でジョエルに取り入る一方で、休職中の片タマ男に近づき入れ知恵して、ジョエルの会社を相手取って損害賠償を起こさせる……というようなお話が基本、軽くてバカで下品なノリで進められるコメディなのだが、「軽くてバカで下品だから」いい加減な映画だ、というわけではない。
ジョエルの社員たちも友人も、バカでいい加減な人間ばかり出てくる映画のなかで、ジョエルは一見インテリで真人間のようだが、会社を売り抜けることとか妻とのセックスレスのこととか、若くてエロいシンディとの不倫とか、目先のことしか考えない子どもみたいな奴だ。シンディに色仕掛けさえれて彼女と不倫したくて、妻への後ろめたさから、まず妻に不倫させようと若い男を金で雇う(その男がまたとんでもない脳タリン)とか、アホくさい話の積み重ねのように見える(そのように演出している)けど、こんなストーリーも、演出によってはデヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』のように重々しいノワールにだってなる。
かっこつけててもバカはバカなんだから、ちゃんとできるところはやんなきゃなんないよ。なんでも金で解決していいわけじゃない。……そんな意外と教育的な話なのではないか。ラスト、シンディに去られたジョエルは会社を売らず、妻ともヨリを戻す。シンディはジョエルからふんだくるのをあっさり諦めて、取れるところ(KISSのジーン・シモンズ演じる弁護士!)から盗って映画から退場する。
バカ話から何を抽出(Extract)するかはわたしたちに委ねられている。
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クリント・イーストウッド『J・エドガー』J. Edgar(2011)を観ました。
誰からも好かれず、というより誰よりも嫌われていたらしい人物=FBI初代長官であり、半世紀に渡りその座にあって歴代の大統領さえも、彼らのスキャンダルを握ることによってコントロールしていたというJ・エドガー・フーバーの半生を描いた映画――というふうに聞いていて、そんな奴の人生を二時間ものあいだ見せられて、辟易しないかと予想していたら、案の定、権力への野心や自己顕示欲を隠さないJ・エドガーの、手段を選ばない権謀術数の数々に、「想像以上だ」と驚きつつ、見終わったあとはなぜか、彼に同情しシンパシーを抱きあまつさえ彼のために泣きそうになるくらいだった。クリント・イーストウッド監督の、クリント・イーストウッド非主演作品のなかでも一、二を争うくらい好きな映画だと思った。
黒人や同性愛者への露骨な差別感情を見せて、キング牧師に対し不倫の証拠テープを送りつけてノーベル平和賞を辞退させようとするなどのくだりは卑劣極まりない。彼の人格形成に、息子に対し過剰な愛情を注ぎ支配する母親の影響――自らも同性愛者でありながら、「強い男」の姿を息子に望む母親に応えようとするあまり自己を抑圧するJ・エドガー――があり、それによって彼の人生を説明しようとする筋書きは分かりやすすぎるくらいで、しかしそういう「物語」だけでこれだけ心を動かされるわけではないはずで、イーストウッドの他の映画と同じように、主人公は自己の内面を饒舌に語ったりはしない。むしろ口に出している言葉と心情との乖離こそが、ドラマや感情や彼の(わたしたちの)人生を駆動する原動力である、ということを強く感じさせる。
わたしたちは彼の(わたしたちの)醜さゆえに、彼を(わたしたち自身を)愛すのだ、と思った。
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ジョン・カーペンター『ニューヨーク1997』Escape from New York(1981)を観ました。
1997年のアメリカは犯罪増加率が400%を超えていて、だからマンハッタンを監獄島にして囚人をぶちこんで看守もおかず、閉じ込めておくことにしたんですよ――みたいな感じのことがさらっと字幕とナレーションで語られて映画が始まると、もうぜんぜんふつうの映画じゃなさそうなことがわかって、意外にもまったりというかねっとりというか地味に進行する序盤にもかかわらずどきどきする。
お金を出した人とか観客とか、作るまえから観られるまえから他人のことを忖度して作られた作品ではぜんぜんない。どうみてもこれは「監督の映画」で、シネフィルじゃなくてもジョン・カーペンターというのが一癖もふたくせもある監督らしい、ということをうすぼんやりと聞いたことがある、とかいうことを抜きにしても、そういうことがわかる感じ。
こういう人にとっては今生きている世の中は、つまんねえのと同時に、「ちょろい」んじゃないかな、とちょっと思う。自分が仕事や生活のことでもやもやしたりぐずぐすしたり一喜一憂してるのが少しばからしく思えて、ちょっとだけ心が軽くなる。いや、映画のなかで進行するのは、クソみたいな未来の、権力者も大衆も腐りきった、身も蓋もないばかみたいな話なんですけど。
1997年というとわたしが大学に進学した年で、というと一人暮らしを始めた年でもあるので自分史的には分岐点なのでよく覚えている年で、ここまでの現実じゃなくてよかったな、と思うと同時に、未来ってこういうふうにも想像できるのか、ふざけてるみたいだけどでも、ちゃんと(?)した映画として30年後もこうして楽しめるものを作れる人はすごい、と思いました。
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音楽にはそういう力がある
ラジオで聴いたり人から聞いたりした話なんですけど、ある音楽家は「音楽は万能だから何でも表現できる」といってて、別のある音楽家は「好きな人に幸運しか起こらない魔法をかけられる音楽を作りたい」んだという。どちらも音楽なら本当にできるような気がする、というかできますよね、わたしも一応37年生きてきたからそういうことは事実としてわかります。
最近、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画と、『はじまりのうた』という映画を観たんですけど、どちらも音楽が素晴らしくて。
『シェフ』は音楽じゃなくて料理人の話なんですけど、料理人だろうが音楽家だろうがアーティストだろうが小説家だろうが同じことで、モノを作る歓び、誰かにそれを届け伝える歓びに溢れてて、そこには最高にゴキゲンな音楽が流れてて、監督、主演のジョン・ファヴローの体型にもマッチしたラテンとかカリブ海な音楽がとてもよかったです。あの曲この曲の楽しいカヴァーも盛りだくさん。
『はじまりのうた』はミュージシャンの話で、ニューヨークの街のいたるところでゲリラ・レコーディングをするキーラ・ナイトレイとプロデューサーのマーク・ラファロの話なんですけど、やっぱり音楽が素晴らしくて。二人でヘッドフォンから音楽を聴いて、ヘッドフォンからの音楽に合わせて二人でクラブで踊るところはちょっと泣きそうでした。
少し前にわたしは小説を書き上げて、今それを整理してどこかへ応募しようと思っているのですが、こういう音楽の魔法のような作品には憧れてしまいます。自分もそういうものを書けているかな?
さてさて、明日11/8は、御坊市はカーヒコ・オ・ケ・アクアにてパタゴニアン・オーケストラ主催のイベント、その名も「Happy Go Lucky」が開催されます。これほど音楽の魔法に似つかわしいイベントタイトルもないですね。ゲストはガルウィングスのンダさん。どちらも和歌山を代表するバンドです。わたしはDJというか、BGMを担当します。楽しいイベントになりそうです。
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